産業医科大学
小児科学教室内
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日本産婦人科・新生児血液学会 第12代目の理事長を拝命しました板倉敦夫です。周産期領域の血液学が、母児にとって有益な進歩を遂げることを願い、これを支える本学会の発展に貢献できるよう尽力して参ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本学会は1976年(昭和51年)に始まった産婦人科血液研究会が、1987年(昭和62年)の第12回から産婦人科・新生児血液研究会へと拡大され、1991年(平成3年)に日本産婦人科・新生児血液学会として設立されたものです。産婦人科・新生児に関わる臨床医と研究医が血液学を基盤として活動している専門学会であり、2025年(令和7年)で50周年を迎えます。
妊産婦と新生児の出血と血栓に対する対応や予防は、本学会設立当初からの最大の課題です。妊産婦や新生児のDICは、他の成人や小児とは明らかに病態が異なるので、独自の診断と対応が必要になります。本学会はこれまで学会員の皆様のご尽力によって、臨床現場で広く利用される産科DIC診断基準と新生児DIC診断・治療指針を作成して参りました。またエキスパートの意見に基づく血友病周産期管理指針2017年版も本学会より公表し、新生児ビタミンK欠乏症の予防へ投与拡大など、周産期の母児の出血性疾患の管理に大きく貢献してきました。 さらに私の就任とともに2024年改訂版産科DIC診断基準も公表され、今後産科DIC管理指針も策定の予定です。血栓塞栓領域では血栓性素因の理解が近年進み、2221年に「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引きQ&A」が診療ガイドとして作成され、本誌に掲載されました。また「新生児から成人までに発症する特発性血栓症の診療ガイド」も、本学会の編集協力の下で2024年に発刊されました。この領域でも本学会はプレゼンスを発揮し、血栓症の管理および予防に貢献して参りました。これからも様々な視点から出血と血栓から母児を守るための学会活動と情報発信を行ってまいります。
母体と胎児は胎盤を介して接しており、血球はわずかな交換のみですが、血清成分の多くが共有されています。また出生はこの共有が途切れる瞬間でもあります。輸血など母児間の血液学的課題の解決、再生医療・遺伝子治療をめざす臍帯血の臨床応用、乳児の重症感染症予防を目的とした母体へのワクチン接種など、周産期血液学はこれからも母児の予後改善に貢献しうる学問であり、この発展は社会からも大きな期待が寄せされています。
婦人科領域の血栓症も大きな課題です。術後や骨盤内腫瘍に伴う血栓症は、時に女性の命を奪う肺血栓塞栓症に繋がる病態で、その予防や対応について、克服すべき課題として、この領域も解決に向けて本学会が取り組んで参ります。
医学専門領域の進化と統合の成果を医療現場にお届けできるよう活動を進めたいと考えております。引き続き皆様のご支援とご指導をよろしくお願い申し上げます。
2024年6月